Appleが2018年に発売した「HomePod」は、優れた音質と優秀な聞き取り精度で高い評価を得たが、ほとんどの人が3万円の高額スピーカーを手に取らなかった。
右肩上がりに伸びるスマートスピーカー市場はAmazonとGoogleの2強。両社が主力としてる低価格なコンパクトスピーカーのマーケットにAppleが投入した約1万円のスマートスピーカー「HomePod mini」の感想・レビューをお届けする。
目次
- ソフトボールサイズ
- セットアップは近づけるだけ
- コンパクト。でも優れた音質
- バツグンの聞き取り精度。でも残念なSiri
- HomePodが内線になるインターコム
- 難がある音楽体験
- まとめ:Appleユーザーならば買い
ソフトボールサイズ
つつ型の土器のような形をしたHomePodに対して、HomePod miniはソフトボールぐらいの手のひらサイズで広い設置スペースを必要としない。
通常のHomePodではオーバーサイズになってしまうデスクやサイドテーブルに置くことも可能。HomePodよりも多くの場所に設置できる。
球体は柔らかい継ぎ目のないメッシュ生地で覆われ、トップに配置されているタッチ操作が可能なプラスチックのパネルを指で長押ししてSiriを起動したり、ワンタップで音量を調整したり、音楽を一時停止するといった操作が可能。
ライトが内蔵されたパネルは音楽の再生中に白色、通話中に緑色、Siriが応答している時はiPhoneでもよく見かけるグラデーションで光る。
ライトの光量が少ないため陽のあたる場所に置くとSiriが反応しているのか分かりにくい。光沢のあるプラスチックで特にスペースグレイは指紋が目立つ。HomePodのレビュー記事で指摘した不満がminiで解消されることはなかった。
タッチ操作が可能なインターフェースはトップに配置されたパネルのみ。プライバシーを守るためのマイクをオフにする専用のボタンはないため、Siriに「Hey Siri、“Hey Siri”をオフにして」とお願いするかiPhoneのホームアプリで操作しなければいけない。Hey Siriを再度オンにする場合はパネルを長タップしてSiriを起動してから「Hey Siri、“Hey Siri”をオフにして」とお願いすれば良い。
ボディの背面からはUSB-Cのケーブルが伸びる。HomePodはコンセントプラグだったため、USB-Cの変更はMacの横に置いて使うことも想定したものと思ったが、残念ながらiMacに接続するとパワー不足を示すオレンジに店頭して動作しなかった。
HomePodを利用するには20W出力の電源アダプタが必要。AppleはiPhoneから電源アダプタの同梱を廃止したが、幸いにもHomePod miniのパッケージには電源アダプタが同梱されている。
ボトムは滑り止め効果のあるラバー素材。HomePod miniに手が当たってもソフトボールのようにコロコロと転がることはない。
セットアップは近づけるだけ
HomePod miniはパッケージから取り出して電源に接続したあとiPhoneをHomePod miniに近づけてカメラで読み取り、画面を数回タップするだけですべてのセットアップが完了する。
AirPodsやApple Watchと同じような超絶カンタンなセットアップが可能。Wi-FiのパスワードやApple IDの設定などはiPhoneをHomePodに近づけるだけで自動でやってくれる。
コンパクト。でも優れた音質
ソフトボールのコンパクトサイズながらHomePod miniは優れた音質で音を鳴らす。サイズがコンパクトになっても価格が安くなっても大型のHomePodと同じ音質に優れたスマートスピーカーの路線はminiになっても変わっていなかった。
Appleはソフトウェアによって高音質化する“コンピュテーショナルオーディオ”によって超コンパクトサイズのスピーカーで驚きの音質を実現している。
配置場所や空間を認識して音を最適化するHomePodのルームチューニング機能は備わっていないが、HomePod miniはApple Watchと同じS5チップを搭載して音の特性を正確に解析し、スピーカーの動きをリアルタイムで制御して音を最良に仕上げる。
リアルタイムで制御されるスピーカーはフルレンジドライバとデュアルパッシブラジエーターを搭載。
- 1つのユニットで高音と低音を出力できる省スペース性に優れたスピーカー
- 本体内部で発生する振動で動作するスピーカー。主に低音補強で使われ、HomePodは2つを内蔵している
スピーカーは電源を取るため壁際に置くことがほとんどのため、部屋の中心に向かって音を飛ばす指向性スピーカーが必要だがコンパクトボディには搭載しづらい。そこでHomePod miniはフルレンジドライバを下向きに配置することで音を下方向に流して360°に放出する設計を取っている。
HomePod miniが来るまで愛用していた第3世代Echo(注:最新モデルではない)と比べるとサイズはぼぼ同じだが音質はまったく異なる。特に低音が強くコンパクトスピーカーとしては敵なしではないだろうか。
2台のHomePod miniを繋げてステレオ化できる「ステレオペア」を利用すればさらに音圧がブーストされる。同じ設計のスピーカーのため低音が補強されるわけでもなく音質が良くなるわけではないがステレオ化の効果は非常に高い。音のバランスを均一化してモノラルスピーカーの不快感を消すこともできる。
なお、ステレオペアに設定できるのは同一のHomePodのみ。HomePod miniとHomePod mimiをペアにすることは可能だが、HomePodとHomePod miniをペアにすることはできない。
バツグンの聞き取り精度。でも残念なSiri
HomePodの優れた聞き取り精度はコンパクトになってもそのままで非常に満足感がある。奥まったキッチンからリビングのHomePod miniに話しかけるなど入り組んだ間取りでなければどこから話しかけても正確に聞き取ってくれた。対してアレクサやGoogleアシスタントはアーティスト名やサービス名を正確に聞き取れないことも多い。
Siriの反応はバツグンだがアシスタントの機能や性能は競合サービスに劣る。
電話をかけたり、メッセージを読み上げたり、LINEを送信したり、カレンダーに予定を追加したり、家の中で見つからないiPhoneの音を鳴らして位置を教えてもらうことはできるが、次の祝日がいつか答えてくれないし、コロナの感染者数も教えてくれない。SiriがやれるほとんどのことはアレクサもGoogleアシスタントもできる。
なお、HomePod miniを通じてカレンダーの予定やメッセージを確認するにはパーソナルリクエストをオンにする必要があるが、残念ながら日本語環境では声の聞き分けができないため、誰でもオーナーのパーソナルな情報にアクセスできてしまうので注意が必要だ。
Siriに家電の操作を依頼することもできるがラインナップの少ないHomeKit対応の製品が必要。家中の家電や照明をHomeKitに買い替えると費用は膨大になるため、特に賃貸に住んでいる人は導入しづらい。
ただ、スマートリモコン/スマートハブを導入してショートカットを組み合わせることで今ある家電を買い換えずHomePod miniやiPhoneのSiriを通じて音声で操作することもできる。「Hey Siri、テレビの音量を上げて」「Hey Siri、ヒーターをつけて」「Hey Siri、暖房を25°に設定して」といった操作ができる。
設定は非常に複雑なのでHomePodで家電を音声操作する設定方法を詳しく解説したので参考にして欲しい。
HomePodが内線になるインターコム
HomePod miniはAppleデバイスを内線のように使える新機能「インターコム」にも対応している。
食事の準備ができたら「Hey Siri、夕食の準備ができたとインターコムで連絡して」と話してリビングから子供部屋に呼びかけることが可能。iPhoneを手に取って画面ロックを解除してLINEを起動してトークルームを選択して文字を打つよりも遥かにカンタン。
インターコムは外出先からiPhoneやCar Playを通じて利用することもできる。車の中から「Hey Siri、買い物に行くけど何か欲しいものある?とインターコムで連絡して」と話せば自宅のHomePodを通じて連絡が可能。音声の収録→送信の流れになるためリアルタイムではないが声のやりとりもできる。
インターコムのために36,080円のHomePodを部屋中に置くことはできないが11,880円のHomePod miniなら負担は軽い。
難がある音楽体験
HomePod miniの音質は素晴らしいが音楽体験には難がある。
「Hey Siri」を通じて音楽を聴くにはApple Musicが必須。SpotifyやLINE MUSICには対応していない。Google NestやAmazon Echoに大きく引けをとるポイントだ。
HomePod miniの発表時にAppleはAmazon Musicなど他社の音楽ストリーミングサービスにも対応すると発表したが現時点で対応しているのはPandoraのみ。Pandoraは日本のApp Storeでは公開されていないため実質的にApple Musicに限定される。
Hey Siriを使わないのであればAirPlayを使って音楽をHomePod miniに転送できる。それぞれのアプリを操作して転送したり、ハンドオフ機能によってiPhoneをHomePod miniに近づければ、iPhoneで再生した音楽がHomePod miniに転送される。
逆にHomePod miniで再生している曲をiPhoneに転送することも可能。出かける前にHomePod miniで聞いていた曲をスムーズにiPhoneで持ち出してAirPodsで聴くことも可能だ。
音楽を聴く上で難があるのは視覚的な音量の確認ができないこと。Echoではボリュームリングで視覚的に音量を確認できるがHomePod miniでは今の音量がどれぐらいなのかわからないため意図せず爆音で流れたり、再生してもまったく聞こえないことがある。
HomePod miniの音質は非常に優れているが全体的な音楽体験は優れているとは言えない。Apple Musicを利用していないのであれば購入を再検討した方が良い。
まとめ:Appleユーザーならば買い
It's GOOOOD!!
- 場所を選ばず置けるデザインとコンパクトボディ
- HomePodよりも手に取りやすい価格。11
- 880円
- コンパクトスピーカークラスで最高の音質
- 高い聞き取り精度
TOUGH...
- GoogleアシスタントやAlexaに敵わないSiri
- コンパクトスピーカーとしては高額
- Apple依存の製品
ソフトボール並みのサイズで圧倒的な音圧を繰り出すHomePod miniはAppleのエコシステムにどっぷり浸かっている人であれば間違いなく最も優先すべきスマートスピーカーの選択肢になる。
一方でAndroidユーザーの選択肢にはなり得ない。iPhoneまたはiPadがなければセットアップすらできず、同じApple製品のMacからでもセットアップできない。
Bluetoothスピーカーとしても利用できないため、AndroidユーザーがHomePod miniを楽しむ唯一の手段はAirPlayのみ。AirPlayに特化したアプリもGoogle Playで公開されているが、そこまでの手間をかけるのであれば別のスマートスピーカーを選択した方が良い。
改善点もある。コンパクトサイズでiMacの横に並べるには最適なスピーカーだが、iMacの音をHomePod miniから出力する正攻法はなく複雑な設定とAirPlay対応のアプリを常に起動し続ける必要がある。HomePod miniの発売はmacOS対応の最適なタイミングだったように思えるがAppleが見送った(そもそも計画しているのか不明)のは残念だ。
パーフェクトではなくこれからの進化や改善に期待したいスピーカーではあるもののコンパクトサイズのスマートスピーカーとして音質と聞き取り精度は現時点でも間違いなく素晴らしいと評価できる製品。値段に妥協せず音の良いコンパクトなスマートスピーカーを求めているAppleユーザーなら買いの一品だ。
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