Appleが2017年11月に発売した「iPhone X」をレビュー。オールスクリーンとホームボタン廃止による新しいデザイン、顔認証「Face ID」、新しいカメラ、有機EL、ワイヤレス充電など気になる新機能も余すとこなくレビュー。iPhone史上最大のアップデートの実力とは。
GOOD
- ステンレススチールによる上質なデザイン
- 美しい映像を映し出すSuper Retina HDディスプレイ
- 持ちやすいコンパクトなボディ
- 高速な顔認証「Face ID」
- 史上最高のカメラ
BAD
- 重いボディ
- 10万円以上の高価格
- 充電スピードが遅いワイヤレス充電
デザイン
数ある「iPhone X」の劇的な進化の中で最も目を引くのは新しいデザインだろう。2014年発売のiPhone 6からiPhone 8まで4モデルにわたって同じデザインが採用されてきたが、「iPhone X」でようやくデザインが変更された。
「iPhone X」は、ディスプレイがほぼベゼルレスのフルスクリーンになったことでこれまでのiPhoneとは大きく印象が異なる。スマホのトレンドをいち早く抑えたディスプレイに触れた後ではそれまでのiPhoneがおもちゃのように感じるほどの新しい体験だ。
ただ、ディスプレイのフチ、「ベゼル」はイメージしていたよりも少し太く感じる。Galaxy S8など他のベゼルレスと比較してしまうと少し物足りなさも感じてしまうのが正直なところ。
切り欠き
まだ購入していない人やApple Storeでほんの少しの時間だけ「iPhone X」に触れた人からはディスプレイ上部にある「センサーハウジング」、いわゆる切り欠きに対して違和感を覚えるという声も聞かれるがすぐに気にならなくなる。縦向きで使用する通常のアプリや横向きでプレイするゲームアプリでも大きな問題はない。
ただ、ステータスバーの表示領域が狭くなったことでパーセント形式のバッテリー残量が表示できなくなってしまったのは大きなマイナスポイントだ。個人的にアイコンはいらないのでパーセントのみを表示して欲しい。今後のiOSアップデートでオプションが復活することを期待したい。
ステンレススチール
ボディには「ステンレススチール」が採用された。iPhone史上最高のデザインとの呼び声も高いiPhone 4/4sやApple Watchでも採用されている素材だが、iPhone Xのステンレススチールは“研磨を尽くした”とAppleが案内する通り、光り輝く見た目と質感でプレミアムな「iPhone X」にふさわしい。
サイド部分のアンテナは変わらずそこにあるが、iPhone 8シリーズとくらべてもかなり細くなって目立たなくなっていることも好印象だ。
なお、ホームボタンが廃止されたことで右側面のサイドボタンを長押しでSiri、ダブルクリックでApple Payを起動できるようになった。これまでよりも格段にボタンを押す回数が増えるため、iPhone 8などに比べて約2倍の大きさに変更されている。
ガラスパネル
ここ数年、iPhoneのバックパネルのデザインはことごとく叩かれた。iPhone 5/5sでは上・中・下で分割されたデザインがダサいと言われ、iPhone 6シリーズからはボディを横断するアンテナはあり得ないとも言われた。
結果的に「iPhone X」ではバックパネルの素材がガラスに戻り、そういった不具合は消え去った。もちろんただガラスに戻るだけではなく、湾曲ガラスになったことでデザイン性も良く、手によくなじみ、多くのiPhoneユーザーが待望としていたワイヤレス充電も実現した。iPhone 7シリーズで話題になった“総務省認定”などの認証ロゴも一掃されたことでスッキリした印象になっている。羅列される認証ロゴは特にホワイト系のカラーで目立っていたが、「iPhone X」では気にする必要がない。
ただひとつ懸念されるのは「iPhone X」を落としてしまった時のガラスパネルの割れだ。Appleはこれまでのスマートフォンの中で最も耐久性のあるガラスを採用していると案内しているがコンクリートに落とせばカンタンに割れてしまうだろう。Appleに問い合わせたところ修理費用は約6万円となるそうだ。iPhone 4/4sでは背面ガラスをバキバキにしている人をよく見かけたが、キレイなiPhoneに保ちたいのであれば「AppleCare+」の加入は必須になる。
バックパネルの繋がりで言えば飛び出たカメラも気になる。ボディから飛び出たカメラに対しては以前から不満の声が多いがこれまでは十分我慢できるものだった。ただ、今回はカメラの並びが縦になったことでiPhoneを机に置いて操作する時にガタガタと不安定で非常に使いづらい。縦に並べた理由はARのクオリティを向上するためと言われているが、iPhone 8の2機種は横に並んだままだ。
サイズ、重さ
「iPhone X」の画面サイズは5.8インチでiPhone史上最大。ただ「iPhone X」は縦長のディスプレイのため、画面の大きさ・面積はiPhone 8 Plusよりも小さい。ボディサイズはiPhone 8がひと回り大きくなった印象でパンツのポケットにもスッと入る。
コンパクトなサイズは満足度が高いが、重さはステンレススチールとガラスパネルによってズッシリとした重さを感じる。ゲームや動画視聴、電子書籍を読んでいる時は腕が疲れやすい。
オールスクリーン
「iPhone X」の数ある変化の中で最も大きなものが“オールスクリーン”を謳うディスプレイだ。
ひと目見た瞬間に目も心を奪われる5.8インチの巨大なスクリーンの存在感は圧倒的で映像を映した時の没入感はこれまでのiPhoneでは得られない新体験となる。
もちろん画質も大幅にアップしている。iPhone史上初となるSuper Retina HDは有機EL特有の発色の良さで同じ映像を映し出すと明らかに見え方が異なる。青空をより青く、朝日をより赤く、影をより黒く映し出し濃淡がはっきりした印象的な映像になる。
オールスクリーンに合わせて写真と動画視聴にも新しいモードが加わった。画面を2回タップして利用できる新しい視聴モードでは切り欠きを飲み込むようにして写真・動画が映し出される。映像の上下はカットされてしまうため字幕が見切れてしまうが、Apple Musicで配信されているカープール・カラオケは字幕が切れないように視聴モードに合わせて表示される。今後は対応動画がもっと増えていくはず。圧倒的な没入感に浸りたい場合はオススメだ。
顔認証「Face ID」
オールスクリーンと並んで「iPhone X」に大きな変化をもたらしたのが顔認証「Face ID」だ
目に見えない3万以上の赤外線を顔に照射することで表情を認識、これまでの指紋認証に比べて20倍以上の安全性を実現した。認証スピードも非常に高速でこれまでの指紋認証とほとんどかわらない。画面ロックの解除もコツを掴めば秒で解除できる。
顔認証「Face ID」のメリットは指の状態に関わらず画面ロックを解除できることにある。雨の日や手を洗ったあとの濡れた指、料理中の汚れた指では正しく認識できない指紋認証特有の問題がない。冬のシーズンであれば手袋をしてても認証できるのもありがたい。寝ている途中に指紋認証でロックを解除されてしまったという話も聞いたりするが、顔認証ならばそれも心配ない。
寝顔、写真は認証不可。サングラスは認証可
これまでの顔認証は精度がイマイチで写真による誤認識なども問題になったが「Face ID」は顔の凹凸を検出するため写真では認証できない。また、「注視」機能によってユーザーがiPhoneを見ない限り動作しないため寝顔で認証することもできない。目をよく見開く必要があるため、半目をあけて寝る人でも解除は不可能だ。
Face IDは「iPhone X」を机に置いたままでも一応動作する。ただ、カメラが顔の表情を捉える範囲には限りがあるため、指紋認証のようにスムーズにいかないことが多く、画面やカメラを覗き込むようにしなければならずストレスを感じることもある。座っているイスや「iPhone X」を置くデスクによっても異なるがほとんど場合においてうまくいかない。
また、マスクを装着すると顔認証が利用できなくなってしまう。これは自分のような花粉症持ちにとってはツラい仕様だ。スギ花粉などが飛散して症状がひどくなる2月〜6月の間、外出先ではFace IDが利用できなくなってしまう。顔認証をオフにするかパスコードを入力するか、息を止めて鼻をつまんでマスクを外すしかない。
一方、驚いたのはサングラスと帽子を装着したままでも顔認証できることだ。Appleは遮光性の高いサングラスでは利用できない場合があるとアナウンスしているがグラスが青みがかったものでも問題なく利用できた。夏や日差しの強い時間帯、マフラーをすることも多くなるこれからの季節も困ることはないと思う。
優れた学習機能
Face IDには優れた学習機能も備わっている。顔認証を使えば使うほど精度がアップしてより安全に、よりスムーズに利用できるようになる。使ってみて精度が悪い、スピードが遅いという場合は学習機能を積極的に利用したい。
学習機能を利用するには顔認証後、認証不可となった時に求められるパスコードを入力するだけで良い。ただし、一つ注意が必要なのは友だちなど他人の顔で認証した後にパスコードを入力すると間違った情報を「iPhone X」に記憶させることになってしまう。試させて!と言ってくる人は多いと思うが、他人の顔で認証したあとはパスコードを入力してはいけないと覚えておこう。
ホームボタンの廃止
2007年に登場した初代iPhoneから10年にわたって搭載されてきたホームボタンは新しい10年へと踏み出すために廃止された。
iPhoneのホームボタンは他社のスマートフォンにも広く採用されている。ずっとiPhoneを使い続けてきた人はもちろん、これまでにiPhoneに触れたことがない人でも操作に戸惑うだろう。
新しいホームインジケーターとジェスチャー操作
ホームボタンの代わりになるのが「ホームインジケーター」だ。画面上に表示される細長いバーをジェスチャー操作することでホーム画面にアクセスしたり、Appスイッチャーを起動してアプリを切り替えることができる。
このジェスチャー操作はなかなか良くできている。上にスワイプすればホーム画面に、左右にスワイプすればアプリをページのようにめくることができる。さらに設定を変更すれば「簡易アクセス」を利用することも可能だ。
ただ、アプリの再読み込みやクラッシュしたアプリを終了するAppスイッチャーの動作ははっきり言って最悪だ。フリーズしたアプリを終了するにはホームインジケーターを上にスワイプしてAppスイッチャーを起動する。ここまでは問題ないがアプリを終了するにはサムネイルを長タップしたあとで上にスワイプするか、「-」ボタンをタップする必要がある。この操作に最初から気付ける人はいないだろう。
数日前に開催された「iPhone X」の熾烈な予約レースに参加した人は来年のiPhone予約を考えてゾッとするはずだ。来年のiPhoneも発売日にゲットしたい人はiPod touchや古いiPhoneは手元に残しておいた方が良い。アプリの起動時にフリーズしたり、正常に読み込みできないバグの多い「Pokémon GO」などのアプリにも小さくない影響がある。
「コントロールセンター」のアクセスに難あり
ホームインジケーターによって起動方法が変更されたのが「コントロールセンター」だ。従来のiPhoneでは画面を下から上に向かってスワイプするとコントロールセンターが起動したが、「iPhone X」ではホームに戻るに割り当てられた。
コントロールセンターを起動するには画面右上、切り欠きの右側を下にスワイプしなければならない。「iPhone X」は、iPhone 8 Plusよりも縦に長いディスプレイを搭載するため男性でも指は届かない。画面を下にスライドする「簡易アクセス」が役に立つが、数多くのショートカットが詰まったコントロールセンターの起動に手間がかかるのは良くない。
バッテリーと劇的な充電の進化
「iPhone X」では充電機能も劇的に進化した。Lightning端子などデザインはまったく変わってないが、中身の充電性能はiPhone史上最大の進化となっている。
バッテリー
「iPhone X」は低消費電力に優れた有機ELの採用によって電池持ちが劇的にアップすると思っていたが、1週間使ってみるとそこまでのものとは思えなかった。
例えば、このレビュー記事のために「iPhone X」のカメラを持って出かけた日は朝9時ごろにフル充電から使い始め、自宅に帰ってきた14時20分ごろに電池が0%になった。駆動時間は約5時間。電車移動の間に乗り換え案内や調べ物をしたり、写真撮影をしたりと決してライトな使い方ではなかったがバッテリー持ちは優秀とは言えない。
平日で困ることはなさそうだが、ナビを使う旅行などではバッテリーに不満を感じるかもしれない。
ワイヤレス充電
iPhoneユーザーが待望としていたワイヤレス充電がようやくサポートされた。Lightningケーブルを探すこと無くパッドに置くだけでiPhoneを充電できるのは非常に便利でこれまでになかった新しい感覚だ。
ただ、今のところ5Wの低速充電しか利用できないのは大きなマイナス。「iPhone X」をワイヤレスで充電したところ、フル充電までに5時間30分もかかった。通常の充電に比べて2時間も長く、体感としては給電に近いものがある。ここまで充電時間が長いともはやワイヤレス充電に必要性を感じない。
かつてAppleのフィル・シラーは「ワイヤレスといえど充電器は電源と繋がっていなければならず、どれぐらい便利なのかわからない」とコメントしたが、今のところはそこまで便利とは思えない。例えば、充電できる範囲が部屋1室とは言わないまでもテーブルぐらいの広さであれば充電時間が遅くても問題ないが、実際は皿ぐらいの範囲でしか充電できず手間が省けるのはLightningケーブルの着脱だけだ。
充電器のそばでiPhoneを使いながら充電したいという要望には応えてくれるがそれ以上のものはない。
ただ、ワイヤレス充電には大きな伸びしろがある。年内のソフトウェア・アップデート配信で7.5Wの急速充電をサポートし、これから空港やスターバックスなどのカフェ・喫茶店、マクドナルドなどのファーストフード、レストランなどに無料のワイヤレス充電スポットが設置されるなど大幅に拡大されれば一気に状況が変わってくる。Apple Payが急速に普及したようにかかる時間はそこまで長くはないかもしれない。
高速充電
年々、搭載されるバッテリー容量が増えるに連れ充電時間も長くなっているiPhone
「iPhone X」は今年発売された3モデルの中で最も大容量のバッテリーを搭載している。試しにパッケージ付属のUSB充電器とLightningケーブルを使って充電時間を計測したところ、2時間で50%、フル充電までに約3時間30分もかかったが、新たに対応した高速充電を利用すれば、30分で50%、わずか1時間50分でフル充電にできた。これならば寝る前に充電を忘れても出かける前に十分な量を充電できる。
前述したとおり現在のワイヤレス充電は5Wのためフル充電までに5時間30分もかかる。ちょっとした時間では少量しか充電できないため、就寝中や充電器の近くで作業するなどワイヤレス充電の利用は限定されてしまう。今の段階では高速充電の方が数段便利だ。
カメラ
旅行や食事など利用機会が多いカメラはスマートフォンを購入するにあたって非常に重要なポイントになる。結果から言えば「iPhone X」のカメラは大切な思い出をキレイに残したいという思いを十分に叶えてくれる。
作例を紹介する前に進化したカメラについて触れておく。「iPhone X」のカメラは新しいイメージセンサーを搭載することで劇的な進化を遂げた。昨年発売されたiPhone 7シリーズと撮り比べても違いがはっきりわかるほどの進化だ。記録した写真と映像は鮮やかなSuper Retina HDディスプレイによってまた一段と高いクオリティになる。
デュアルレンズはiPhone 8 Plusと同じだが、2倍以上のズーム時に大活躍する望遠カメラはf/2.8からf/2.4になってより明るく記録できるようになり、待望の光学手ブレ補正をサポートしたことで手ブレが発生しやすいズーム時でもクリアな映像を撮影できる。サンセットやイルミネーションの撮影で活躍するだろう。
フロントカメラのTrueDepthカメラは、自撮りでも背景ぼかしやが適用できるポートレート撮影が可能に。さらに、顔を明るく照らしたり、印象的な影を作って輪郭を強調するなどさまざまな照明エフェクトを適用できる「ポートレートライティング」にも新たに対応した。
iPhone X | iPhone 8 Plus | iPhone 7 Plus | |
---|---|---|---|
広角カメラ | 12メガピクセル ƒ/1.8の開口部 光学手ブレ補正 |
||
望遠カメラ | 12メガピクセル ƒ/2.4の開口部 光学手ブレ補正 |
12メガピクセル ƒ/2.8の開口部 ー |
12メガピクセル ƒ/2.8の開口部 ー |
ポートレートライティング | ○ | ○ | × |
ビデオ撮影 | 4Kビデオ撮影(24fps、30fpsまたは60fps) | 4Kビデオ撮影(24fps、30fpsまたは60fps) | 4Kビデオ撮影(30fps) |
フロントカメラ | 7MP ƒ/2.2の開口部 ポートレートモード |
7MP ƒ/2.2の開口部 ー |
7MP ƒ/2.2の開口部 ー |
アニ文字 | ○ | × | × |
性能面で大きく進化した「iPhone X」、どれほどの違いが出るのか「iPhone 7 Plus」と撮り比べてみた。
ポートレート
一眼レフのような背景ぼかしがiPhoneでカンタンに撮影できるポートレートモード。本来は人物を撮るためのモードだが料理などを撮影しても面白い。
撮り比べてみると「iPhone X」の背景ぼかしはマイルドで不自然さを感じない。さらに、ポートレートモードの最大の不満点は“離れてください”という警告が出まくってなかなかシャッターボタンが押せないことだったが、「iPhone X」ではポートレートに利用する望遠カメラの焦点距離が短くなったことで長い距離を取らなくてもカンタンに撮影できるようになった。撮影した写真には現れないがこれは非常に嬉しいポイントだ。
一方、コップのフチや細い線など輪郭を認識する精度に変わりはなくものによってはおかしな仕上がりになることもある。以下のハンバーガーでも波を打つレタスを正しく認識できずぼかしが適用されてしまう写真もあった。
紅葉
これから見ごろを迎える紅葉。1枚目の写真ではiPhone 7 Plusでは陽が当たる左奥のイチョウや青い空は白飛びしているが、「iPhone X」はイチョウは黄色く、空も青く白飛びが見られない。2枚目の写真でも「iPhone X」のカメラは紅葉と青空を色鮮やかに記録できている。なお、「iPhone X」ではHDRがオート化されてカメラアプリからボタンが削除された(設定から変更可)。iPhoneが適切だと判断した時にHDRが自動で適用される。不安もあったがiPhoneにまかせてもなんの問題なかった。
夕景
イルミネーション
これから撮る機会が増えるイルミネーションをポートレートで撮影してみた。ポートレート撮影時は望遠カメラに切り替わるため、iPhone 7 Plusのƒ/2.8に対して、「iPhone X」はより明るいƒ/2.4で撮影できる。ただ、今回撮影した写真を比べる限りでは明るさに大きな差は見られなかった。
2枚目の写真は刷新されたイメージセンサーの効果がよく現れている。ノイズが出やすい暗い背景部を見比べると「iPhone X」のノイズは小さくなっていることがわかる。
アニ文字
顔の表情を認識できるTrueDepthカメラは顔認証「Face ID」に加えてまったく新しい「アニ文字」も実現した。
SNOWやSnapchatなどのマスクにインスパイアされた感は否めないが、ユニコーンや犬、そしてうんこなどなじみのある全16種類の絵文字を自分の表情に合わせて自由に動かせる感覚が非常におもしろい。
アニ文字はメッセージアプリ内で利用できるが、撮影後は動画として保存することでTwitterやInstagram、LINEのトークで送ることもできる。海外ではアニ文字でカラオケを歌う「#AnimonjiKaraoke」が一時トレンドになった。
今後も面白い使い方が出てくることを期待したい。例えば、アニ文字がサードパーティにも解放されれば、LINEのコニーやブラウンといったキャラクターも自分の表情に合わせて動くスタンプが送れるようになれば面白くなりそうだ。
iPhone X レビュー総評
Appleのティム・クックCEOが「iPhoneの発表以来、最大のアップデートになる」と言葉にして登場した「iPhone X」は新しいデザインやいくつもの変化によって久しぶりにワクワクするモデルだ。発売日から1週間たった今でもワクワク感は変わらない。
細かい不満はあるが、それ以上に楽しく、新しい体験を返してくれるのが高く評価されていたiPhoneだった気がする。最近までおサイフケータイ(厳密に言えばFeliCa)や防水も非対応だったし、今思えば考えられないがマルチタスクもなかったし、コピペすらできなかった。それでもiPhoneが人気を集めたのは不満を飲み込むほどの新しく、楽しい体験が得られたことが理由の一つにあると思う。
顔認証「Face ID」は指紋認証ほどスムーズではないかもしれないが、画面ロックを解除するたびに新しい体験が得られる、学習機能によって成長していく様子も楽しい。ホームボタン廃止によって操作方法が変わったことで一時的に困るかもしれないが、iPhoneをまた一から使いこなすことができる。最初にiPhoneを手にした時と同じような感覚だ。
それでも10万円以上の価格はネックだが、ディム・クックいわく1日1杯のコーヒーよりも「iPhone X」は安い。さらに付け加えるならコーヒーよりも断然価値があるものだ。この発言はアメリカに限定したものだが、日本でも最大半額または大きな割引を受けられる新しいプログラムを各社が用意している。「iPhone X」が1日1杯のコーヒーよりも安いのかは3社の料金をカンタンに比較できる料金シミュレーターで確認して欲しい。
いずれにせよ毎日に眠気を覚ますコーヒーよりも毎日、新しい体験を得られる「iPhone X」の方が遥かに価値があることは間違いない。